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本当にゴルフは多いのか? キーワードで分析する、第10回事業再構築補助金の傾向と今後の方向性

第1回事業再構築補助金(2021年4月30日締切)より、2年6か月が経ちました。当初は「ウィズコロナ・ポストコロナ社会へいかに適応するか」が強く意識された本補助金でありましたが、2023年5月、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行し、「ポストコロナ社会」は未来のことではなく現在のこととなりました。

コロナの影響が大きい業種を立て直すための本補助金ではありますが、回を重ねるにつれ「この事業計画なら採択される」「この設備なら補助金で買える」という、一種のスキーム化していったことは否めません。2023年10月11日開催の財政制度分科会(財務省)では「ゴルフ関連」の事業が79件採択されていることが問題視されるなど、改めて「事業再構築補助金」のあり方が見直される時期に来ています。

リンク:2023年10月11日開催の財政制度分科会(財務省)資料

上記の資料では「ゴルフ」を含むもの79件「エステ」を含むもの59件「自動販売機(自販機・無人販売)」を含むもの19件「サウナ」を含むもの18件が指摘されていました。

そこで今回のブログでは、第10回事業再構築補助金で採択された事業計画5,200件について、ゴルフ」や「サウナ」以外の用語についても独自で調査してみました。採択結果の傾向と、本補助金が今後向かうべき方向について考察したいと思います。

今回お伝えしたいポイント1.  「ゴルフ」「エステ」「サウナ」の事業計画書は実際多いの? 

2.キーワード件数から見る事業再構築の傾向(第10回事業者持続化補助金で採択になった事業計画書をもとに)

3.これから求められる事業再構築の形

※ご注意 今回お示しする「件数」について

  • 第10回事業再構築補助金で採択された事業計画書のテキストデータを基に件数を調査しました。
  • 「カフェ」から他事業へ再構築する場合も、事業計画書に「カフェ」の文字列が入っている場合「カフェ:1件」とカウントされます。検索によるノイズを含む可能性があります。事業計画書に「パンデミック」と書いてある場合「パン:1件」にカウントされます。

ゴルフはそんなに多いのか?「健康・運動」事業

前述の財務省の財政制度分科会資料では、「ゴルフ」が79件もあることを指摘していました。新型コロナをきっかけに健康意識はこれまで以上に高まっており、健康ビジネスへ事業再構築により進出する需要は一定程度あるものと考えられます。では、健康、スポーツ等、「健康増進系」の採択件数を見てみましょう。

「健康」を含む事業計画は158件(うち健康寿命11件、健康経営7件)。次点で「ゴルフ」がランクインしていますので、やはりゴルフは多そうです。一方、ジム、フィットネス、トレーニングを合算すると139件となり、ゴルフよりも多くなります。また、財務省に指摘されていた「サウナ」ですが、こちらは18件止まりとなり、さほど多くないように見受けられます。

いずれにしても「規模感のある設備投資が伴い」、なおかつ「流行廃りがあるもの」は一考した方がよいかもしれません。

おうち時間は“美”に費やす?「美容」事業

緊急事態宣言下では「おうち時間」が注目されました。筆者のまわりでも「対人接触のないセルフ脱毛サロン」が増えた印象です。では、「美」に関する事業計画はどのくらい採択されているか見てみましょう。

約5,200件中250件で「美」に関する事業計画が採択されています。なかでも脱毛は50件あり、関心の高さが伺えます。

「エステ」の件数については、やはり財務省分科会にて指摘を受けておりましたが、従来より健康に関する需要や市場性は高く、必要性の高い事業であると考えます。一方、採択事業者の数が多いことからも分かるように「競合が多い」業界であり、競合分析や差別化戦略は十分に行った方がよいでしょう。

なお、美容にとどまらず、医療分野にも踏み出た、「医療」を含む事業計画は78件でした。国の支援策(補助金)を活用し、より高い品質が求められる「医療」事業へ挑戦してみてもよいのではないでしょうか。

インバウンド復活でV字回復なるか?「観光・宿泊」事業

新型コロナによる外出自粛や渡航制限などにより、観光・宿泊市場が大打撃を受けました。コロナ以前の2018~2019年には、拡大するインバウンド市場に向け、先行して設備投資を行った事業者の苦境は相当なものであったと思います。

「泊」のキーワードを含む事業計画は145件。「成長枠の対象となる業種・業態の一覧」には「インバウンド顧客をターゲットとした宿泊業」(7511 旅館,ホテル、7521 簡易宿所)と具体的に示されていることから、「観光・宿泊」市場は2023年現在、回復・成長していることが分かります。一方、「対人接触が少ない」「屋外なので感染リスクが少ない」ということからコロナ禍において重宝されたキャンプ・グランピングは若干下火となっており、ポストコロナ社会へシフトしていることが感じられます。

今後、観光・宿泊業への事業再構築を検討する際は「インバウンド顧客」のニーズをきめ細やかに研究する必要がありそうです。

何を出すか?ではなく、どう出すか?「飲食・食品」事業

新型コロナといえば、飲食店の被害は相当なものでした。営業時間の短縮、酒類の提供禁止など、ほとんどの事業者が長期間にわたり、厳しい条件での営業を余儀なくされました。第10回事業再構築補助金で「食」を含む事業計画は470件と業種の中では特に多く、飲食店、飲食店以外、いずれも採択されています。販売形態別、メニュー別に見ていきましょう。

<販売形態別>

コロナ禍において飲食店では「何を提供するか」よりも「どう提供するか」が課題となりました。中食、内食のニーズが急成長。出前館やUber Eatsに代表されるデリバリーサービスがあっという間に我々の生活に浸透しました。在住・在勤の既存のお客様に飲食サービスを提供できない、というピンチをチャンスに変えるべく、冷凍食品を開発し、自動販売機やECサイトでの販売を始める事業者も多く見られました。

<メニュー別>

次に、メニューを見てみましょう。カフェが最も多く、6位のコーヒーを入れると200件を超えます。一見多すぎるようにも見えますが、国内飲食店の約20%が喫茶店であることから、妥当な数字であると言えるでしょう。

3位の「焼肉」ですが、他の飲食店よりも設置されている換気扇の数が多い(各テーブルに1つずつ換気扇がある)ことや、近年の肉ブームの後押しもあり、再構築後の飲食事業として選ぶ事業者が多く見られました。

なお、第10回事業再構築補助金では高級食パン・フルーツサンドは0件。再構築しようとしている事業が一時的に盛り上がりを見せているものなのか、今後も継続が可能なのか、見極めが大切そうです。

自動車と農業にかかわる事業者必見!「新技術・新市場」

次に、近年話題となっている新しい技術や市場、ビジネスモデルに関する用語を含む事業計画書の数を見ていきましょう。

新技術ではEV(電気自動車)に関する事業計画が多く、127件ありました。2030年には電気自動車へ完全にシフトすることが予定されており、自動車業界は大きな転換期にあります。Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)という4つの領域(CASEと呼ばれます)で技術革新が起きており、自動車メーカー、販売店、整備工場など、業界全体が再構築の過渡期にあります。

2位の「農」は「農業」に関するもので、98件あります。AIやドローン、デジタル技術を活用した農業のDX化が進められるなかで、事業再構築補助金を利用されているようです。

ChatGPT、メタバース、NFT等は話題性は高いものの、技術水準が高いため挑戦している事業者はまだ少なそうです。

労働力の減少とどう向きあうか?「新しいビジネスモデル」

飲食業に限らず、ECサイトを新販路として選択する事業者が多く、129件あります。3位の無人も含め、「人がいなくても24時間365日注文が取れる・販売できる」しくみを模索する事業者が多いように見受けられます。

また、人や事業者をつなぐ「プラットフォーム」「マッチング」や、所有しない消費活動に着目した「レンタル」「シェア」なども多く見られました。前者はヒトやノウハウ、後者はモノが対象となりますが、それぞれ限りあるリソースを無駄なく活用しようとする試みです。省人化・省力化、リソースの有効活用など、よりスマートな社会へと向かう流れを感じます。

少子高齢化、労働人口の減少が顕在化しており、「募集をかけても人が来ない」とお悩みの方も多いと思います。雇用の促進は継続していただきつつも、「人が少なくても事業を続けられるしくみ」は引き続き模索していく必要がありそうです。

これから事業再構築を考える社長へ「社会課題の解決」

ここまで、第10回事業再構築補助金で採択された事例をもとに、全体の傾向を見てきました。では今後、事業再構築を考える事業者は、どのような視点で事業計画を立てるとよいか、考えてみたいと思います。

事業再構築補助金は「経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促す」ことを目的としています。採択を受けた事業者のみの経営状態がよくなるのではなく、連携する事業者や、地域、ひいては国に好循環を生み出す、ダイナミックな取り組みであることが求められています。

事業計画書に「地域」「地元」というキーワードを含むものは524件(採択された事業計画全体の10%)あり、より広い視野で事業を考えている計画が評価されていると言えます。

エネルギー問題(CO2排出量削減、原油価格高騰)や廃棄物削減(リユース、リサイクル、アップサイクル)などは特に関心が高く、多くの事業者が事業再構築補助金を活用して取り組んでいます。これら以外にも少子高齢化問題、増加する自然災害への対策、地方都市の空き家問題等々、社会課題は山積しています。

事業再構築補助金は国からの補助金(国民の税金)を活用する事業でもあります。「社会課題の解決」を視野に入れ、自社のみならず、連携する事業者や地域、国がともに成長できる事業を考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回のブログでは、「第10回 事業再構築補助金」の結果をもとに、どのような事業計画が採択されているのかを分析しました。事業再構築補助金にこれから挑戦する、不採択となった事業計画を考え直す際の参考にしていただければ幸いです。

また、第10回事業再構築補助金の分析についてはこちらの記事もご覧下さい。

【第10回】事業再構築補助金で一番採択率が高い枠・業種・認定支援機関は?

 

HKS(補助金活用支援会)では、豊富な支援経験・採択実績をもとに、事業計画のアイデア検討段階からご支援が可能です。ぜひご相談くださいませ。

 

 

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  1. 2023年 12月 17日
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