HKSブログ
【事業再構築補助金】 事業計画で悩んだら必読! 『事業計画書作成ガイドブック』を解説 ~ 申請の際の困りごとも解決 ~
はじめに
「どうすればよい事業計画を作れるのか分からない」という声をよく聞きます。このような方のために、経済産業省から「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」(以下「ガイドブック」)が出されています。
有望な事業計画書を作成するために検討すべき項目が体系的に書かれており、採択を勝ち取るためにも有益です。
ただ全部で128ページもあり、それだけで読むことをあきらめてしまう方もいらっしゃいます。
そこで本ブログでは、「ガイドブック」を要約して解説しました。
また「事業計画を作成する際に役に立つポイント」として、皆様からいただいた質問に答えるかたちで「ガイドブック」の記述をご紹介します。
お忙しい方は、こちらだけでも読んでみてください。
今回お伝えしたいポイント1.事業再構築補助金「ガイドブック」とはどのようなものか
2.事業計画はどのように作成するか
3.再構築の新規事業はどのようなものがいいのか
「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」とは
「ガイドブック」は、「事業再構築の考え方」を伝えることを目的としたものです。
以下のサイトからダウンロードできます。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/jigyokeikaku_guidebook.pdf
対象は、事業再構築補助金への申請を検討している中小・中堅企業です。
「補助金採択のためのガイドブックではない」とありますが、事業再構築について正しく認識していないまま事業計画を作成しても的外れなものになってしまい採択されません。そのため「ガイドブック」を確認しておくことで採択につながります。
また「競合他社の動向調査はどのような方法でどのような項目を調査する」など事業計画策定の際にに悩みがちなところが具体的に示されていたり、「資金調達で銀行借り入れを考えている場合は銀行から内諾を得ていることを書くことが望ましい」など採択に直結する書き方などが示されていたりします。
「ガイドブック」の概要
「ガイドブック」の全体像
「ガイドブック」は、3部構成となっています。
1)事業再構築の必要性確認
まず、なぜ事業再構築が必要なのかを確認します。
ありたい姿を言語化し、現状とのギャップを埋めるために行うのが事業再構築です。
自社でなぜ事業再構築が必要なのかを腹落ちさせましょう。
2)有望な事業テーマの選定
自社にとって有望な事業テーマの選定方法を説明しています。
具体的には、①市場/競合/顧客の調査、②強み/弱み分析、③事業テーマの幅出し/評価・選定のうえ、テーマを決定します。
ビッグデータ分析による業種ごとの具体的な有望テーマも示されています。
3)事業計画の具体化
事業検討において具体的に考えるべき項目と記述の粒度感がわかります。
記述の粒度感とは、どの程度細かく書くべきかということです。
業種別に、具体的な記述例と解説も書かれています。
また「参考」として「事業テーマの傾向分析結果」「業種別の事例紹介」「重要トピックの傾向分析結果」「アクションに繋げるためのツール類」「事業再構築に関する参考情報」も書かれていて、有益な情報が満載されています。
事業再構築の必要性確認
・ 新型コロナウイルスの影響を受けて、事業環境が大きく変化しました。自社のありたい姿を改めて見直すことが必要です。
※ 自社のありたい姿とは「5~10年後に実現したい事業・経営や顧客への価値を描くこと」です
・ 自社のありたい姿を見つめ直し、現在とのギャップを明らかにし、そのギャップを埋めるものが「事業再構築」です。本当に事業再構築が必要かどうかを明らかにします。
有望な事業テーマの選定
・ 自社が置かれている環境分析、特に強み/弱みの棚卸しを行い、それを基にいま流行りのテーマではなく「自社にとって有望な事業テーマ」を見定めます。
・ 具体的な手順は、以下の通りです。
① 市場/競合/顧客の調査
市場規模・トレンド、競合他社の動向、顧客ニーズの変化を把握します。
これにより、自社が置かれている事業環境を明らかにし「今までの自社リソースがどう活かせるか」を棚卸しします。
② 自社の強み/弱みの分析
SWOT分析により、「自社の強み」×「事業機会」を特定します。
③事業テーマの幅出し/評価・選定
① ②の結果をもとに事業テーマ候補を洗い出し、テーマ候補を複数の観点から評価して絞り込み、事業再構築の事業テーマを決定します。
特に強みに関しては「自社の強みを活かした差別化ができるか」を念頭に評価をします。
事業計画の具体化
■ 検討が必要な項目(13個の重要トピック)
・有望な事業計画書に共通して含まれる「検討が必要な項目(13個の重要トピック)」に沿って事業計画を具体化します。
下図の検討すべき項目に書かれているのが、13個の重要トピックです。
・ 13個の重要トピックで具体化すべきことを以下に示します。
■ 認定支援機関の関わり方
・ 有望な事業計画は、調査・分析、戦略、財務等、多岐にわたる検討が必要です。
経営の専門家(認定支援機関)に相談し、客観的な助言を得ながら考えを深めることが大事です。
「自らが主体となる部分」と「支援機関の助言をもとに精度を引き上げる部分」を分け、相談の濃淡をつけることが必要です。
■ 事業再構築に向けた事業計画の考え方
① 事業再構築の方針決定
ありたい姿と現状のギャップを埋めるアクションとなる「事業再構築」の方針を前提として定め、取るべきアクションの詳細を事業計画に落とし込めるまで具体化します。
② 新製品・サービスと実現する強み
新たな製品/サービスの実現確度を高めるために、自社の強みとなる既存事業のリソースの活用、不足する強みの新規構築のやり方を具体化します。
③ 目標設定と投資対効果の検証
次の考え方が大事です。
・目標達成の根拠の明確化
売上増/コスト減を顧客セグメント別/商品別等に細分化して精度を高めます。
・集中投資する活動の見極め
強み構築に繋がる活動に投資資金を集中させます。
・投資対効果の数値検証
事業計画と投資回収期間、キャッシュフローとの整合性を確認します。
④ 実行可能な計画の策定
事業再構築の構想を計画に落とし込み、目標達成への見通しを確かなものにします。
計画作成のポイントは、以下の通りです。
・売上計画、収益計画
5年スパンで事業の質的な変化を見立てます。
また売上/利益の要素を分解(売上=顧客数×単価など)して算出根拠を明確にします。
・資金調達計画
事業再構築に必要な資金額を算出し、自己資本/借入/補助金ごとに計画します。
・実行スケジュール
目標から逆算して重要マイルストンを区切り、3カ月単位で計画を詳細化します。
・人員体制
人材面の強みを明確化するよう配置計画を作成します。
社外の提携パートナーや業界の人脈も活用できるよう、幅広に体制を定義します。
■ 具体的な記述粒度の考え方
具体的な記述例を、検討が必要な項目ごとに抜粋して見てみます。
どのくらいの粒度が適切なのかをつかんでください。
・市場(市場規模・トレンドの把握)
xxxのレポートによると、全国的には「xx」の市場規模 は20年xx億円、21年xx億円と例年増加傾向に あり、25年まで年率x%で伸びる見込みである。
加えてヒアリング結果より、自社の商圏であるxx県 においても同等の成長が見込めると想定
・競争優位性(既存事業の強みの活用)
取引先から高評価を得ているxx部品の品質と加工 技術に既存の強みがあり、新製品開発においても xxの技術を活用して優位性を築く
・課題/解決策(例:顧客獲得の課題)
課題: 新規事業である施設への顧客獲得
解決策:主な集客方法として①インフルエンサーを 活用したSNSマーケティング②ポータルサイト への掲載③近隣店舗との連携による 相互送客の3点を実施
参考資料
「ガイドブック」では、「参考」として以下の5つが掲載されています。
a. 事業テーマの傾向分析結果
・蓄積されたビッグデータを分析し、統計上有望な再構築の事業テーマを特定しています。
・分析は「採択率」×「申請率」で行い、有望度「高」「中」「低」に分けています。
以下のブログもご参照ください。
b. 業種別の事例紹介
・業種別に、申請書記述例とその解説が書かれています。
c. 重要トピックの傾向分析結果
・13個の重要トピックについて、それぞれのトピックの申請書への記載割合などを分析した
結果「生産性」と「シナジー」の記載漏れが多く、記載漏れがあった場合の採択への影響
も大きいことが判明した。
・「既存事業とのシナジーによる成長」と「効率性を考慮した生産性向上」を記載することが採択につながると考えられる。
・再構築点④「地域やサプライチェーンのイノベーションへの貢献(社会貢献)」が考えられているかどうかが採択/不採択に大きく影響する。
・「デジタル技術全般」について約9割の計画書に記載しているが「先端的なデジタル技術」
が記載されているのは約2割に留まる。
・「先端的なデジタル技術」を記載することにより差別化が図られ、採択につながると考えられる。
d. アクションに繋げるためのツール類
以下のツールが紹介されています。
・事業計画書作成のチェック項目リスト
・事業計画検討ステップごとの作成スケジュール
・作業再構築ハンズオン支援事業
・小規模事業者支援ガイドブック
・J-GoodTech(ジェグテック)
・ローカルベンチマークシート
e. 事業再構築に関する参考情報
以下の参考情報原が紹介されています。
・事業再構築補助金の概要
・事業再構築指針の手引き
・採択事例紹介
・事業再構築補助金の制度に関する説明動画
・認定支援機関検索システム
事業計画を作成する際に役立つポイント
申請者からよくご質問を受けることについて、「ガイドブック」の記述をご紹介します。
Q1 競合他社の動向をリサーチしたいのですが、
やり方がよくわかりません。調査方法や調査項目を教えてください。
調査方法:
・HPや口コミサイト
・商品の試用
調査項目:
・商材の性能、価格
・技術/知財
・販売網、提携先
・SNS、広告出稿
・業界知見、ノウハウ
良い調査のポイント:
・代替品等周辺領域を含めて競合の強さや数を把握し、差別化余地の検討材料を収集
Q2 収益計画は根拠を明確にしなければならないと言われましたが、どのようにすれば根拠が明確になるのか悩んでいます。
具体的な記述例:
・既存事業の売上は前年実績を基準に 前年よりも低いxx万円を想定。
補助事業については、 初年度は単価x円で年間x万台、5年後は 年間x万台を生産し、
x万円の売上見込である
解説:
・市場・顧客ニーズの根拠をもとに売上見込みを 試算
・認定支援機関からの助言を受けながら計画の実現性を高めることが有効
Q3 飲食業を営んでいます。事業再構築が必要なのはわかったのですが、どのような事業を行えばよいか悩んでいます。
有望度が高い事業テーマ:
① 通販・ECの活用による販路拡大
ECサイトや通販を介して自社商品を販売
例)地元食材を利用した食料品をECサイトで販売
② 冷凍食品事業の展開
地元食材、特殊冷凍技術等の付加価値を前面に示す事業の展開
例)冷凍魚の新商品製造・販売
③ スイーツ・菓子の製造・販売
スイーツ、菓子を製造し店舗やECを通して販売
例)低糖質の日常菓子の製造
④ 惣菜の製造・販路拡大
内食需要に向け惣菜に焦点をあて、既存資産・ アライアンスによる付加価値の創出
例)ダイナミックプライシングを活用した無人販売
Q4 事業計画書をつくりました。でも本当にこれでいいのか分かりません。
事業計画書作成のチェックリストによって、チェックしてみましょう。
Q5 事業再構築補助金に申請しようと思っています。初めてなので、事業計画を完成するのにどれくらいの時間がかかるのか、どのように進めたらいいのか見当がつきません。
事業計画の作成に90-120時間かけた場合の採択率が最も高く、1日当たり約2時間の工数捻出と余裕を持ったスケジューリングが必要です。
標準的な作成スケジュールを以下に示します。
おわりに
いかがでしたか。
「ガイドブック」に興味をもっていただけたなら、実際に「ガイドブック」を読んでみるといいでしょう。
全部で128ページありますが、実はそのうち70ページほどは業種ごとの有望テーマや事例が書かれています。
業種ごとですので全部を読む必要はなく、自分の業種に該当するページだけを読めばいいので、思うよりも時間をかけずに読めます。
本ブログで書ききれなかったことも知ることができます。
「ガイドブック」を理解し、事業再構築のベースとなる考え方を身に着け、ぜひ採択につなげてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
以下のブログもご参照ください。
HKSでは、事業再構築補助金をはじめ、様々な補助金の申請・活用方法を提案しサポートを行っております。ぜひご相談ください。