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【徹底解説】事業承継・引継ぎ補助金を活用できる事業者の全6パターン
経営者の高齢化も年々進んできており、コンサルティングの現場では次世代への経営の引き継ぎが課題になっている事業者の話をよく伺います。そんな事業者様を支援するための補助金として、「事業承継・引き継ぎ補助金」があります。2024年1月から事業承継引き継ぎ補助金の8次公募も新たに開始しましたので、今回は事業承継引き継ぎ補助金の活用パターンについて解説していきます。
本記事でお伝えしたいこと
事業承継・引継ぎ補助金を活用して経営革新に取り組もう!
事業承継・引継ぎ補助金とは?
事業承継引き継ぎ補助金事務局が作成したパンフレットには「事業承継・引き継ぎ補助金は、中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取り組みを行う事業等について、その経費の一部を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、我国経済の活性化を図ることを目的とする補助金です」とあります。
少し複雑な文章でわかりにくいですが、要点は以下の4点にまとめることができます。
・中小企業者及び個人事業主が、
・事業承継等を契機(きっかけ)に、
・新たな取り組みを行う事業に対して、
・その一部経費を補助する補助金です。
つまり、事業承継等を検討されている事業者様が主に使うことができる補助金です。なお、本補助金には活用場面に応じて3つの枠が用意されています。それぞれについての概要は以下の通りです。
3つの枠 | 概要 | 補助上限額 | 補助率 |
経営革新枠 | 経営資源を引き継いだ(あるいは予定である)中小企業者が経営革新を行う際の費用を一部補助する。 | 800万円 | 1/2〜2/3 |
専門家活用枠 | M&Aをこれから行う中小企業者(売手・買手どちらでも可)が専門家を活用する際の費用を一部補助する。 | 600万円 | 1/2〜2/3 |
廃業・再チャレンジ枠 | M&Aに着手したが事業の譲渡ができなかった中小企業者が現在の事業を廃業する際の費用を一部補助する。※単独申請の場合 | 150万円 | 1/2〜2/3 |
※「第8次 事業承継・引継ぎ補助金 公募資料」より作成
事業承継・引継ぎ補助金を活用できる事業者の全6パターン
事業承継・引継ぎ補助金を活用ができる事業者は、主に以下の6つのパターンに分類することができます。
~経営革新枠の3パターン~
①事業承継をきっかけに創業し、経営革新に取り組む事業者(創業支援類型)
②親族や従業員が経営を引き継ぎ、経営革新に取り組む事業者(経営者交代類型)
③M&Aを契機に、経営革新に取り組む事業者(M&A類型)
~専門家活用枠の2パターン~
④経営資源を譲り受ける(買手)際に、専門家活用やプラットフォームを利用する事業者(買手支援類型)
⑤経営資源を譲り渡す(売手)際に、専門家活用やプラットフォームを利用する事業者(売手支援類型)
~廃業・再チャレンジ枠の1パターン~
⑥事業譲渡(売手)に着手しているが、新たな挑戦をするために廃業を予定する事業者
こう見ると、既に事業承継に着手している事業者だけではなく、これから着手しようとしている事業者についても補助の対象に入っていることがわかります。続いて、それぞれのパターンについて枠ごとに解説していきます。
(経営革新枠)3つの活用パターン
経営革新枠には、3つの事業者のパターンがあります。
~経営革新枠の3パターン~
①事業承継をきっかけに創業し、経営革新に取り組む事業者(創業支援類型)
②親族や従業員が経営を引き継ぎ、経営革新に取り組む事業者(経営者交代類型)
③M&Aを契機に、経営革新に取り組む事業者(M&A類型)
ここでの注意点は、単に事業承継をするだけでは補助金の対象にならないと言うことです。承継した経営資源を活用して、「経営革新」に取り組むことが補助の条件となっています。経営革新とは、新商品・サービスを開発することや、新しい生産方式や販売方式を導入したりすることを通じて、新規顧客開拓や生産性向上を図ることです。例えば、飲食店では新メニューの開発やテイクアウトの導入、新コンセプトに沿った店舗の改装などを行い、今まで呼べていなかった顧客層を開拓することなどがそれにあたります。
そのため、経営革新枠を活用する場合は、認定経営革新等支援機関へ事前相談の上、確認書を発行してもらうことが必須となっています。私たちHKSも認定経営革新等支援機関に登録していますので、お困りごとがあればお問い合わせください。
経営革新枠の補助対象経費
具体的な補助対象となる費用区分は以下の通りです。いずれの費用も「経営革新に取り組むために必要となる経費である」というストーリーが必要になります。
経費区分 | 概要 |
店舗等借入費 | 国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料 |
設備費 | 国内の店舗・事務所等の工事、国内で使用する機械器具等調達費用 |
原材料費 | 試供品・サンプル品の製作に係る原材料費用 |
産業財産権等関連経費 | 補助対象事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用 |
謝金 | 補助対象事業実施のために依頼した専門家等に支払う経費 |
旅費 | 販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費 |
マーケティング調査費 | 自社で行うマーケティング調査に係る費用 |
広報費 | 自社で行う広報に係る費用 |
会場借料費 | 販路開拓や広報活動に係る説明会等での一時的な会場借料費 |
外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経 |
委託費 | 業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 |
※廃業・再チャレンジ枠との併用で「廃業費」も対象となります。
(専門家活用枠)2つの活用パターン
専門家活用枠には、2つの事業者のパターンがあります。
~専門家活用枠の2パターン~
④経営資源を譲り渡す(売手)際に、専門家活用やプラットフォームを利用する事業者
⑤経営資源を譲り受ける(買手)際に、専門家活用やプラットフォームを利用する事業者
つまり、売手・買手のどちらの立場であってもM&Aに関する専門家への委託やマッチングプラットフォームを利用する場合には、本補助金を活用することができます。
ここでの注意点は、委託する専門家は誰でも良いわけではなく、中小企業庁が制定した「M&A支援機関登録制度」に登録されている専門家でなくてはならないと言うことです。登録された専門家は、中小企業庁の登録機関データベース(https://ma-shienkikan.go.jp/search)で検索することができます。私たち、HKSも本登録制度に登録している専門機関ですので、お気軽にお問い合わせください。
▼MA支援機関登録制度に関してはこちら
専門家活用枠の補助対象経費
具体的な補助対象となる費用区分は以下の通りです。
経費区分 | 概要 |
委託費 | 補助対象事業の実施に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費。(FA 業務又は仲介業務に係る、相談料、着手金、マーケティング費用、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬、価値算定費用等の中小 M&A の手続進行に関する総合的な支援に関する手数料など) |
謝金 | 補助対象事業を実施するために必要な謝金として、専門家等に支払われる経費。 |
システム利用料 | 事業再編・事業統合等に伴う承継先又は被承継先候補とのマッチングのためのプラットフォーム等への登録料及び利用料。 |
旅費 | 補助対象事業を実施するために必要な国内出張及び海外出張に係る経費(交通費、宿泊費)の実費。 |
外注費 | 補助対象事業の実施に必要な業務一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費。 |
保険料 | M&A 当事者間で交わされる最終合意契約に規定される表明保証条項に関して、事後的に当該表明保証条項違反が判明することに起因して発生する損害等を補償目的とする保険契約等に係る保険料 |
※廃業・再チャレンジ枠との併用で「廃業費」も対象となります。
(廃業・再チャレンジ枠)1つの活用パターン
廃業・再チャレンジ枠には、1つの事業者のパターンがあります。(なお、廃業・再チャレンジ枠は、他枠と併用申請ができますが、本記事では単独申請のみの場合を解説しています。)
~廃業・再チャレンジ枠の1パターン~
⑥事業譲渡(売手)に着手しているが、新たな挑戦をするために廃業を予定する事業者
つまり、既に売手としてM&Aに取り組んではいるものの、買手が見つからずに譲渡ができていない事業者が、現在の事業を廃業し、新たな取り組みに挑戦する場合にも、本補助金が活用できます。
ここでの注意点は、「M&Aに取り組んでいる」という条件を満たすためには、下記3つのいずれかに該当する取り組みを、2020年1月以降の6ヶ月間行っている必要があると言うことです。これ以外の取り組みは、基本的に「取り組んでいる」と認められません。
廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費
具体的な補助対象となる費用区分は以下の通りです。
経費区分 | 概要 |
廃業支援費 | 廃業・清算に関する専門家活用費用及び従業員の人件費 |
在庫廃棄費 | 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 |
解体費 | 既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費 |
原状回復費 | 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 |
リース解約費 | リースの解約に伴う解約金・違約金 |
移転・移設費用 | 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
【対象外】事業承継やM&Aと見なされないケース
ここまでは、事業承継引継ぎ補助金で補助対象となる活用パターンについて解説してきました。事業承継であれば広範囲に活用できる補助金のようにも見えますが、以下のような承継・M&Aについては原則補助対象外とみなされますので注意しましょう。
補助対象外のケース
① | グループ内の事業再編 |
② | 物品・不動産等のみを保有する事業の承継 |
③ | M&A(Ⅲ型)での申請にも関わらず、親族内承継である場合 |
④ | フランチャイズ契約、又は実質的にはフランチャイズ契約であるとみなされる場合 |
⑤ | 従業員等へののれん分け、又は実質的にのれん分けとみなされる場合 |
⑥ | 事業譲渡における譲渡価格が0円(無償)である取引や、株式譲渡における、株価1円での買 収である取引 |
⑦ | 事業譲渡において、有機的一体な経営資源の引継ぎが行われていない場合
➢ 有形資産のみの事業譲渡と判断される例 ➢ 無形資産のみの事業譲渡と判断される例 |
⑧ | 株式譲渡後において、譲渡後に承継者が保有する被承継者(対象会社)の議決権が過半数 に満たない場合 |
⑨ | 休眠会社や、事業の実態がない状態の会社における代表者交代、M&A等 ・ 設立間もない法人における代表者交代又は開業直後の事業主からの事業譲渡等におい て、その正当性が確認できない場合 |
⑩ | 合同会社の社員間における代表社員交代において、事業を承継するための経営者交代とみ なされない場合 |
⑪ | 上記各事例の他、事業承継・M&Aが行われたことを客観的に確認できない場合 |
※「8次公募 事業承継・引継ぎ補助金 公募要領」P.13より引用
第8次公募について
2024年1月9日より第8次が開始しております。スケジュールの概要については以下の通りです。申請にあたっては、必ず最新版の公募要領を確認ください。
受付開始 | 2024年1月9日(火) |
申請締め切り | 2024年2月16日(金) 17時 |
交付決定 | 2024年4月上旬 |
補助事業完了日 | 2024年9月16日(月) |
実績報告期日 | 2024年9月26日(木) |
※上記は変更になる可能性がありますので、必ず公募要領をご確認ください。
▼最新の公募要領はこちら
最後に
今回は事業承継・引継ぎ補助金の活用パターンについて解説しました。事業を拡大するためにM&Aを検討している事業者様や、これから誰かに引継ぎを検討している事業者様などに幅広く活用いただける補助金です。
私たちHKSは事業承継・引継ぎ補助金を含む、補助金全般的な支援を行っております。いつでも無料相談を承っていますので、補助金について相談したいことがありましたら、ぜひ以下よりお問い合わせください。