HKSブログ

事業再構築補助金 採択を引き寄せる「強み・弱み、機会・脅威」の分析とは?

昨年度から始まった事業再構築補助金。
2022年度は3回の募集が予定されています。

第6回公募の解説はコチラ

採択を狙って、事業アイデアを練っている事業者の方も多いのではないでしょうか。
補助金を活用して新規事業を始めるためには、①事業アイデアを具体的な取組に落し込み、②事業計画書にまとめ上げ、③採択を受ける必要があります。
事業計画書は第三者(審査員)が理解し、納得できるものでなければなりません。
まず、事業計画書に記載が必要な項目を確認してみましょう。


事業計画書に記載が必要な事項

事業計画書の要記載事項は、公募要領に書かれています。
公募要領の記載事項を、キーワードのみで整理したのが図表1です。
(オリジナルの記載は、公募要領中「10.事業計画作成における注意事項」をご参照ください)

公募要領(第6回)はコチラ


事業計画書は現状分析からスタートします。
事業計画書で語られるストーリーの説得力に直結するのが、「強み・弱み、機会・脅威」の分析です。(図表1の①)

強み・弱み、機会・脅威の分析

「強み・弱み、機会・脅威」の分析のことをSWOT(スウォット)分析といいます。「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字からから名付けられた、経営分析の手法です。
「強み」「弱み」の分析とは、自社が保有する、商品やサービス、技術やノウハウ、顧客リストや販路、立地、人材、設備など資産の状況の分析です。
「内部環境」と言い表します。
「機会」「脅威」の分析とは、自社ではコントロールすることのできない、社会、自社の市場、競合となる企業の動きといった自社の外部の動きの分析です。
「外部環境」と呼びます。
また、「強み」「機会」は自社にとってプラスの要因「弱み」「脅威」は自社にとってマイナスの要因です。
企業が置かれている状況を、4つの要素に分けて整理し「見える化」するのがSWOT分析です。

プラス要因 マイナス要因
内部環境

(商品やサービス、技術やノウハウ、顧客リストや販路、立地、人材、設備など資産の状況)

強み(Strength)
自社の持つ強みや長所、得意なことなど
弱み(Weakness)
自社の持つ弱みや短所、苦手なことなど
外部環境

(社会、自社の市場、競合となる企業の動きなど、自社の外部の動き)

機会(Opportunity)
社会や市場の変化などでプラスに働くこと
脅威(Threat)
社会や市場の変化などでマイナスに働くこと

(出典:ミラサポplus「マンガで分かる、SWOT分析」)

戦略の方向性を探る

SWOT分析を利用すると、次のステップとして、内部環境と外部環境の組み合わせにより、戦略の方向性を検討することができます。
組み合わせは、「強み×機会」、「強み×脅威」、「弱み×機会」、「弱み×脅威」の4パタン。
それぞれについて、取るべき施策を考えることにより、企業が向かうべき方向性が見えてきます。

内部環境
強み 弱み
外部環境 機会 強み×機会
強みを発揮して、機会を活かす
積極戦略
弱み×機会
弱みを改善して、機会に挑戦する
改善戦略
脅威 強み×脅威
強みを利用して、脅威を避ける
差別化戦略
弱み×脅威
脅威の影響を最小限にとどめる
防衛・撤退戦略

(出典:ミラサポplus「マンガで分かる、SWOT分析」)

経営資源の乏しい中小企業にとって、経営の方向性を考えるうえで最も重要なのは、「強み」と「機会」の組合せです。
「機会」があるところで、自社の「強み」をどう活かせるかが、企業が成長するための鍵です。
また、長引くコロナ禍において、企業が変化に対応して生き残るための鍵でもあります

事業計画書におけるSWOT分析の意義

事業再構築補助金に挑戦しようと考えている事業者の方は、既に事業アイデアをお持ちです。
おそらく、それはSWOT分析の作業から生まれたものではありません。
日々事業に取組みながら、市場の動きや顧客のニーズを感じ、自社の状況を顧みるなかから生れてきたものでしょう。
では、申請に当たりSWOT分析に取組み、事業計画書に記載する意義は何でしょうか?
HKSでは、次の3点と考えています。
①新規事業の方向性の正しさの根拠、および現状の窮状の要因を整理できること
①整理する過程で、事業アイデアを事業化する際の課題がみつかること(これまでの検討の、抜け漏れチェックができること)
③協力者となる、第三者にも分かりやすい表現にまとめられること
(補助金を拠出する国を、自社の協力者にしましょう!)

事例で考える

どのように根拠や要因を整理・チェック・記載していくのか、事例を用い具体的に考えてみましょう。

【A社の事例】
・地方の県庁所在地の繁華街で3軒の飲食店(そのうち2軒が居酒屋)を経営している事業者。
・3年前より、病院の厨房の運営を業務受託する事業を開始。
・コロナ禍で居酒屋の来店者が激減。事業再構築の取組として、高齢者配食事業に進出を計画。
・進出方法として、フランチャイズチェーンへの加入を検討中。
・厨房設備の導入費を、補助対象経費として申請したい。

マイナス要因(「脅威」と「弱み」)の分析

事業再構築補助金は、新型コロナウィルス感染症の影響で打撃を受け、大幅な売上減少に見舞われた事業者の事業再構築を支援する補助金です。
そのため外部環境のマイナス要因は、コロナ禍の影響がまず挙がることになります。
業界特有、市場固有の「脅威」があれば、それもピックアップが必要と思われます。

一方、内部環境の「マイナス要因」は、コロナ禍によって表面化した、自社の既存ビジネスの弱点を、まず記載することになるでしょう。
補助金を申請する事業者は、事業計画書の中で「事業再構築の必要性」(図表1の②)について述べなければなりませんが、マイナス要因の分析はその根拠となります。

【事例の場合】

プラス要因 マイナス要因
内部環境 強み(Strength) 弱み(Weakness)
・居酒屋に依存した経営
・客層がビジネス客中心
外部環境 機会(Opportunity) 脅威(Threat)
・コロナ禍による消費者の居酒屋離れ(密になりやすい)
・中心市街地の空洞化による、集客力の低下

プラス要因(「機会」と「強み」)の分析

プラス要因の分析では、事業アイデアが有望であり、価値ある取組であることの根拠を、内部環境と外部環境に分けて整理します。
記載内容は、事業者ごとにそれぞれとなります。

【事例の場合】

プラス要因 マイナス要因
内部環境 強み(Strength) 弱み(Weakness)
・病院の厨房運営受託で獲得した調理ノウハウ
・人材育成力
・社長の給食会社での勤務経験
・居酒屋に依存した経営
・客層がビジネス客中心
外部環境 機会(Opportunity) 脅威(Threat)
・高齢者人口の増加
・A市における高齢者配食ビジネスの未成熟(競争者が少ない)
・コロナ禍による消費者の居酒屋離れ(密になりやすい)
・中心市街地の空洞化による、集客力の低下

もう一度、マイナス要因(「脅威」と「弱み」)の分析

事業アイデアの事業化を考える場合、ここでもう一度、マイナス要因の分析に戻るに必要があります。
新たな取組は、外部環境の「機会」(チャンス)を活かし、内部環境の「強み」を活かすものです。
しかし、事業転換や新分野展開につながる取組である以上、自社が未だ保有していない経営資源(設備、人材、技術、システム、販路など)も多いのではないのでしょうか。
これらは、新規事業の市場において他社と競争するうえで、「弱み」となります。

また、新市場で事業を展開する際の「脅威」も、想定されるでしょう。

【事例の場合】

プラス要因 マイナス要因
内部環境


強み(Strength) 弱み(Weakness)
・病院の厨房運営受託で獲得した調理ノウハウ
・人材育成力
・社長の給食会社での勤務経験


・居酒屋に依存した経営
・客層がビジネス客中心
弱み(Weakness)②
・高齢者向け献立のノウハウ無し
・顧客管理システム無し
・専用厨房無し
外部環境


機会(Opportunity) 脅威(Threat)
・高齢者人口の増加
・A市における高齢者配食ビジネスの未成熟(競争者が少ない)


・コロナ禍による消費者の居酒屋離れ(密になりやすい)
・中心市街地の空洞化による、集客力の低下
脅威(Threat)②
・高齢者配食市場への他社の参入

新規事業を展開するうえでのマイナス要因の捉え方

事例では、新たな取組を事業化するに当たってのマイナス要因を「脅威②」「弱み②」と記載しました。
ただ、これらは、新規事業に取組むことにより認識される事項です。
「脅威」「弱み」と捉えるのではなく、「リスク」「課題」と捉えることも可能です。

いずれにしても、事業化を成功させるためには、これらをキチンと認識し、その対策・解決策が考案されている必要があります。
(「リスク」「課題」と捉えた場合、事業計画書では図表1の③で記載)。
事例では、高齢者配食市場への進出の方法として、フランチャイズチェーンに加入することが、その答となっています。
高齢者向け献立のノウハウや、顧客管理システムをいち早く利用可能になり、スピーディーな事業展開により他社に先んじて市場シェアを押さえることができるのです。

採択事例から学ぶ

事業再構築補助金で採択された10事例の「事業計画書」が、補助金のポータル・サイトで公開されているのをご存じでしょうか。
本ブログで利用した事例は、その中の「株式会社中心屋」様の事業計画書の記載内容に、本稿での説明のため少々手を加えたものです。
採択された事例ですので、目を通すと多くの学びがあります。
事業再構築補助金の申請をご検討の事業者様は、自社と近い業種の事業計画書を一読されてはいかがでしょうか。

(クリックすると表が拡大します)

補助金ポータル・採択事例紹介ページはコチラ

おわりに

今回のブログでは、事業再構築補助金の事業計画書に記載が必要な「強み・弱み、機会・脅威」の分析に関して、分析の内容、分析の意義、具体的な分析の典型事例について、解説しました。
事業再構築補助金の事業計画書は、「認定経営革新等支援機関」(略して、認定支援機関)と協力して作成することが必要です。
認定支援機関からは多くのアドバイスが得られるでしょう。
ただ事業者の方がご自身で「強み・弱み、機会・脅威」の分析に取組むことで、納得性の高い気付きがあり、より実現性の高い事業計画の策定につながるように思います。

HKSは、中小企業診断士が事業者様に寄り添い、サポートに当たる認定支援機関です。
事業再構築補助金の申請をお考えでしたら、ぜひお声かけください。

認定支援機関の説明はコチラ

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントは利用できません。